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第7章 過去



翌日、わたしは何時もの様に通学し、何時もの様に挨拶をし、授業の準備に備えた。創設祭の一連の出来事以降、わたしはクラスメイトと少し距離があった。物の見方を変えれば、自分の勉強に集中出来き、多少は負担が無くなり、わたしにとっては好都合だった。自分の勉強に集中出来るからだ。勉強繋がりで言えば休みの期間、何処で勉強をしようかと考えていた。


今までのわたしなら迷わずに図書館を選ぶのだけど、あなたに勉強を教えるのも悪くないのかも知れない。勉強だけではあなたは身が持たないだろう。その時は外に出て過ごせば良いし、わたしだってあなたと行きたい場所、見たい景色もある。これは冷静に考えるとデートなのだろう。わたしは妄想にふけて、単に惚気てもいた。そのような事を授業の合間に考えていた。
わたしの人生にこんな事が今まであっただろうか?とさえ考えた。

昨日の出来事を振り返り、我に返った。わたしは美也ちゃんに聞きたかった事があった。話自体もしかしたら10分程度で終わるかも知れないし、場合によっては20分以上かかるかも知れない。なんせあなたの妹さんだし、的を得ない答えが返ってくるかも知れない。そう考えてわたしは昼休みに美也ちゃんと会う事に決めた。


それまでの時間はあなたに昼休みの予定を聞き、わたしは適当に口実を告げ、予定に移す事にした。




‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「美也ちゃん。こんにちは。...食事中ごめんね。落ち着いたらで良いんだけど、この後時間もらえないかしら?」

「あっ!絢辻先輩こんにちは!...この後ですか。...大丈夫ですよ!」

そうやって簡単なやり取りを行い、テラスで待ち合わせる事にした。美也ちゃんは相変わらずにしししっと笑っていた。最初は妙な笑い声に感じたが、今では違和感を感じなかった。それどころかその笑い声は美也ちゃん特有の声だと認識した。
その後、昨日のケーキの御礼、あの時、美也ちゃんの過剰な反応を示した真意を聞いた。事の発端はこうだった。

ーー2年前のクリスマスに初恋の相手をデートに誘ったが、その場所に相手が来なかった事。その数日間、あなたは押し入れに閉じこもり、3学期の期間を苦痛を味わいながら卒業を迎えた事。相手が来なかった事の真実が解らなかった事。ーー

やがて進学し、恋に奥手ではあったが、わたしとあなたが巡り会えて美也ちゃんは感謝している様子だった。わたしだって出会えた事に感謝している。
最初はあなたの性格は純粋すぎて、優しくて、危ういとさえ思っていた。わたしとあなたの価値観が違いすぎて、偽善者気取りとさえ感じた。わたしは沢山の結果を出してきた。それでも報われなかった事、わたしを見ていて欲しい人が家族じゃなかった事、誰も見ていなかった事、それが何よりも悲しかった。だけど。


あなたはわたしを見つけてくれた。自分勝手かも知れないが、あなたの事を知りたかった。過去も未来も受け入れたかった。ただそこにはわたしのエゴも少しだけ覗かせた。わたしは過去も家族についても避けてきた。ここでわたしが問いつめてもそれはフェアじゃなかった。あなたに対しては公平さを求めた。無意識に自分に返ってくるものと考えていたからだろう。しかし別の角度から考えれば、あなたはその過去の出来事を克服しているのかも知れないとも思った。わたしを好きでいてくれた事で成長したのかも知れない。わたしはどうすれば良いか考えていた。答えは知っていたが、美也ちゃんの前で感づかれるのを避ける為に一言御礼を言って、手に持っていたお菓子を渡した。美也ちゃんは最初は遠慮したものの、上手く言いくるめて、美也ちゃんは礼を言いお菓子を受け取って校舎に戻って行った。




わたしは暫く立ち尽くしていた。やはりたいした事ではないだろうと思っていたが、たいした事ではないと結論づけてしまうほど、わたしはあなたを知らない。チャイムが鳴っていたと思うがそれはさほど重要な事ではなかった。まだクリスマスツリーの撤去作業が残っており、木陰がやけに大きく感じた。



わたしの陰はあまりにも小さく、無情にもわたし自身を見つめていた。








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