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第1章 夜明け


あれから、誰よりも近くにいる事を確かめ合うように朝まで寄り添った。
わたしはその日初めて両親に反抗した。家に帰らないという反抗だ。あなたと寄り添う事で温もりを感じ、昨日まで見えていたモノクロだった世界に鮮やかに色が差し込む。


......きっと今までのわたしは色が差し込んだ事すら気づかなかったかも知れない。
校内でのフォークダンス、2人で手を取り合い踊った。あなたはお世辞にも上手くはなかった。それでもわたしの手を離す事は無く、握ってくれていた。わたしがわたしらしく踊れた瞬間だった。

あなたはわたしを見つけてくれた。まるであなたがわたしらしく過ごせる場所を与えてくれたんじゃないかとさえ思えた。クリスマスは平等に幸せであるべきと信じてきた。そう願ってきて、少しは報われた様な気がする。わたしが報われるなんて、去年では考えられない事だった。クリスマスツリーがこんなにも綺麗だった事。例えこれからも誰が見ていなくてもあなたがわたしを見てくれて、どこまでも連れて行ってくれると信じられたからだ。



飾らなくても笑えて。
些細な事でも喜べて。
そして、
誰よりも真剣に生きているわたしが好きだと言ってくれた。


わたしはこの世界に1人きりなんかじゃない。
今日まで本当に生きてきてよかった。


創設祭の次の日。

「絢辻さん。今日これからどうしようか.......」

「そうね......」


暫く考えて、今日が休みだという事を知る。
創設祭が終わったら間もなく冬休みだ。学業に励むのは当然だけど、少しだけ....
ほんの少しだけあなたに甘えて過ごすのも良いのかも知れない。
そう、束の間の休息。気高き鷹が羽を休める様、わたしも休息を求めた。
子供の頃、行きたかった場所。憧れた物。時間をかけて2人で見るのも悪くないかな。


わたしをもっと知って欲しい。小説をプレゼントしたのも、わたしの好きなものをプレゼントしたのは、押付けがましい様だが、少しでも自身の価値観やわたしを知って欲しかったからなのかも。
悲惨な恋愛小説だけど、古き良き作品であり、賞賛に値する作品だ。



そう考えると、わたしはクリスマス以前からあなたの気を引きたかったのかも知れない。
今思えば幼稚な行動だけど、わたしを見て欲しい

だけど。
無理にわたしの望みを押し付けたくない。だからあなたに委ねよう。
あなたがどんな生活をしてきて、どのような物を好み、どのような環境で育って、何を見てきたのか。


知りたい。
今日はあなたに委ねよう。


「....今日は....橘君の家に......お邪魔してもいいかな。」


「ええ? ..うん。.....大丈夫だよ。絢辻さん。....でも」

「ん?どうしたの?」

「無理はしなくていいんじゃないかな。」

「む....無理なんてしてないわよ!」

「ははは。わかったよ。」

「もう....。」

ここまで一緒にいたのに、改めて恥ずかしくなる。
一般的に家にお邪魔するのは、まだ早いのも知れない。寧ろ常識的に考えてそんな高校生はいないんじゃないだろうか。出会ってからの付き合い自体浅い。

生憎、わたしは恋愛の参考書は持っていない。
わたしは想定外の出来事には滅法弱いのかも知れない。今日という日を逃したら、次は何時こういう機会に恵まれるか解らない。でも今なら怖くない。
真実と偏見も含めて、わたしなりに考えを巡らせる。わたしはわたしの変化に改めて気づいた事がある。


わたしは恋をして。
わたしは少しだけ弱くなった。


「.....ちょっと待って。..橘君。一度帰って準備がしたいわ。橘君はそれでも大丈夫?」

「うん。じゃあ途中まで送っていくよ。」

「....ありがとう。」


休日の早朝なのもあり、人はまばらで視線を気にする事もあまり無かったが、制服姿なのもあり、すれ違う大人の何人かは怪訝な顔をしていた。視線から逃れる様にわたしとあなたは少し視線を落とした。
2人で河沿いを歩く。わたしはあなたの少し先を歩き、あなたは後ろから見守る様に後を追う。草木が風と共に舞う。2人の間に風が突き抜ける。わたしの周りに付きまとっていた何かが風に流され、形無く姿を消した。それが何だったのかは解らないが、今はもう考える事は無かった。わたしは微笑み歩調を合わせ手を差し出す。あなたは一瞬慌て、すぐに歩調を速めた。そしてわたしの手を受け止めた。わたしはつんとした表情をするが、笑顔で受け止めた。


このまま河沿いの道が永遠と続いて欲しいと思った。
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テーマ : 二次創作
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